「植木に口付け」・夜襲期間限定ブログ
お風呂の中で思いついたので、勢いに任せてキーボードたたいて、まあさらしておきます。
連作「ワールドハピネス」につながる、むしろ「ワールドハピネス」後の、葵さん。
葵って、字があまりきれいではないイメージが。
「葵って書くのめんどくさいよね」とか言いそうです。原作が迷子。
"愛のない手紙"
(あるいは世界の幸福についての第一思考)
*
伊波葛さんへ
こうして文字にしてみると、お前の名前っていかにも偽名という感じを受けますね。でも、棗もなかなかいないですね。お前の本名がもっと偽名のようだったら笑いますけど。俺の本名は普通です。敬語だと書きにくいですね。もういいや。敬語やめた。普通に、話すように書くことにする。
今、俺はお前と会話することができない。少し前までお前といつでも話すことができたのに、今はできない。お前が離れて、急に、俺が今死んだら、二度とお前と話せないまま死んだらと考えてしまった。何だか不安になってきてしまって、どうも、その考えが頭から離れない。だから、こうして、手紙を残すことにしたんだ。俺がもし死んでも、きっとお前はこの手紙を見つけてくれると思う。その時俺は、お前ともう一度言葉を交わせるじゃないか。そう思って、この手紙を書くよ。手紙は苦手だから、きっと読みにくいと思うけど、ごめん。本当に手紙なんか、書いたことないな。外国に留学していた時期があったけど、その時に日本へ手紙を書いたくらいだ。飽きて2,3通しか書かなかった。恋文も、ほとんど書いたことがない。ほら、恋文はもらうほうだからね。書く必要がなかったんだ。あ、今、呆れただろう。俺にはわかるぞ。本当だからな?
なんだろう、何が書きたかったんだっけ、まあいいや、とりあえず、俺はお前といて、楽しかったんだなって今、思うよ。もちろん最初はお前のことを融通の聞かない頑固者だと思ってたし、俺とはまったく性格の違う、気の合わない奴だと思ってた。でもしばらく一緒にいるにつれて、お前も面白いところがあるし、案外優しい奴なんだなって気付いた。写真館ではよく口喧嘩をしていたように思うけど、それさえ楽しかった。
あの頃が幸せだったなんて言わないよ、もちろん。幸せを過去形にするのは嫌いなんだ。もう人生が終わってしまったようで。これから幸せがないなんて誰が言えるんだろう。だろう? 葛。(そういえばこういう話を前にもしたことがあったな。あの時は色々悩ませてごめんな。少し格好つけたかっただけなんだよ。)
お前は今、何をしてるんだろう。それさえわからない俺は、お前の何を知っていたんだろう。でもお前も、多分、俺のことを何も知らないと思う。桜井機関に入る以前の俺の人生を知らないと思う。それでいいのかもしれない。人生なんて知らなくても、俺はお前の存在に安心していた。それで充分じゃないか。何が充分だ? 何だろう。(消すのが面倒だから、このままにしよう)
恥ずかしくなってきた。俺は愛してるとか、大好きだとか、そういうことが言いたいんじゃないんだ。
ただ、お前と出会って俺はよかった、それが、言いたい。もしこの手紙を読んでいるお前のそばにもう俺がいなくても、それさえ伝えられれば俺は満足だ。
感傷的な気分ってのは、俺はあまり好きじゃないな。
読み返すのはやめよう。絶対、恥ずかしくなって破り捨てるから。
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