「植木に口付け」・夜襲期間限定ブログ
こんばんみ、なかつです。
性懲りもなく庭師パロをパロパロします。
しかしオーディオドラマが神すぎる件について。(やっと聞いた)
・・・・・・ただならぬ関係・・・・・・公式乙です。
あと疑問なのは、どっちの部屋が広いのぉぉぉぉ!! たぶんアニメ本編ではどっちがどっちかは出ないだろうから、勝手に妄想するよ! いいね! あ、でもアニメ見た感じそういえば葵の部屋広かった気がする・・・・・・まあ性格的にも葛たんのほうがあれだよね。どうでもよさそうだよね、広さとか。狭くても「精神の鍛錬・・・・・・」とか思ってそう。
"colors of garden 2" 紫蘭の茎
やはり他人から認められると、張り合いが出るものである。仲間の庭師からも、最近機嫌がいいが何かあったのか、と聞かれるほどであった。いやちょっと、と葵は笑顔を浮かべ頭をかいて答えた。
伊波家の庭師の仕事は、半ば自己満足で行われているものだと思っていた。それでよかった。こんな自分を雇ってくれるこの家に感謝したかった。それでも、反応がなければふと虚しくなるときもあった。何をしているのだろう、とうつむきたくなるときがあった。だけれど、見てくれる人はいたのだ。自分の行為に意味はあったのだ。
伊波葛。
彼は見てくれていた。嗚呼、思い出すと気付かぬうちに笑みがこぼれてしまう。
葵の最後の仕事、伊波家の子どもたちの部屋に飾られた花を取り替えること。
本来ならば部屋の主が帰ってくる前に行われなければならない仕事だったのだが、三日前、庭の手入れに熱中しており花の取替えが遅れてしまったために、葵は部屋の主と鉢合わせすることになった。葵はとにかく頭を下げたのだが、そんな彼にかけられた言葉は感謝の言葉であった。
――毎日、綺麗な花を。
彼はそう言った。
彼は見ていたのだ。自分が、毎日替えた花を。嬉しかった。純粋に、嬉しかった。そして、堅物そうに見えるけれど案外優しい人なのかもしれないと、葛の認識を改めた。いかにも自分、他人共に厳しそうな隙のない振る舞いをする人であった。葵は葛をあんな近くで見たことはなかったのだが、習い事か何かから帰ってくる彼を遠くから見たことがあった。自分とはかけ離れた性格をしているのだろうと一目で分かった。端正な顔は何の表情も表れておらず、前をまっすぐ見つめていた。自分は、人生に対してすぐ妥協してしまう。すぐ眼を逸らしてしまう。真剣に自分を高めることができない。できることといえば、庭を綺麗にすることだけだ。
葵はまた彼の部屋に足を踏み入れた。今日は順調に庭の手入れが終わったので、彼と会うことはないだろう。昨日飾った花を抜き、花瓶に持ってきた花を挿す。伊波家の庭の片隅で栽培されている花だ。蘭の仲間なのだが、非常に丈夫であり、育てやすい花だ。しかしその姿は蘭の幽かな憂いと謙虚な美しさをきちんと備えている。
これを見て、彼はまた微笑んでくれるだろうか。
葵はそう考えながら、部屋を後にした。
紫蘭。
花言葉は、「美しい姿」。
伊波葛が自分の部屋に戻ると、花瓶に紫色の花が飾られていた。さほど大きくないが、さりげない存在感を放っている。その優美な姿に葛は小さく息をついた。三日前、庭師と部屋で出くわしたことを思い返す。毎日花が替わっているものだから、よっぽど花が好きなのだろうと考えていたが、偶然出会った彼が花に向ける視線は、慈しみを絵にしたような、そういうものだった。本当に花を愛しているのだとわかった。自然と、感謝の言葉が口をついて出た。自分でも少し驚いた。自分がそんなことを言うとは思わなかった。今になって気づく。嗚呼、自分はこの毎日替わる綺麗な花に、予想以上に癒されていたのだ。
葛は茎をつまむと、花瓶から花を一輪抜いて、そのまま縁側に向かった。
月明かりが庭を照らしている。
縁側に腰掛け、彼が手入れしただろう庭を眺めた。細かいところまで整えられた、非常に美しい庭だった。くるくると指先で彼の活けた花を弄びながらしばらく葛はそこに留まった。
いつも思っていた。
なんて完成された庭なのだろうと。
これを作り上げているのは、彼だったのだ。一度くらい顔を見たことがあったかもしれないが、多忙な生活の中で忘れてしまっていた。
嗚呼、明日も早いというのに、自分は何をしているのだろう。
こんなことをしても、自分に彼のような慈しみの視線が持てるわけでもないというのに。
紫の花びらをそっと口元に近付けた。
紫蘭(シラン)の花言葉:
美しい姿
互いを忘れないように
・・・・・・「互いを忘れないように」に激しく萌えました。
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