「植木に口付け」・夜襲期間限定ブログ
ども。
なかつです。
ただいまモブリンカーンから始まる一応シリアスなエロ葛妄想をぽてぽてとすすめております。どうしても書きたいワンシーンがあるので、そのために頑張ります。
しかし刻々と11話が近付いていますね・・・・・・! 葛たんこれからどうなってしまうの・・・・・・お願いだから幸せになってね・・・・・・!!!!!
今回の庭師パロは、短いです。
お花も何も出てきません。
オリジナルな妄想が入っています。
所謂伏線ってやつです。
だってせまじさんが葛たんは次男っていうから! 何で次男かねって考えたら! まあ、ちょっとしたネタが降って切っちゃったから! 入れちまった! みたいな!
多分皆さんが想像しているものとは違うかもしれませんが、広い心で見ていただけると嬉しいです。
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"colors of garden 5" 小休止 (と見せかけて誰かの舞台裏)
伊波葛はベッド側に引き寄せた椅子に座り、じっと兄の顔を見ていた。随分、やつれた。兄は体が強くなかった。こうして寝込んでばかりいる。兄と外で遊んだ記憶はない。
「何か飲みますか」
「お前なら」
葛の気遣う言葉を遮るように、兄は声を発した。決して強くない、消え入りそうな声。だが、長年それを聞き続けている葛にとってそれは、耳の中に響く。しっかりと残る。兄は自分の顔を覗き込んでいる葛の頬に、手を伸ばし、触れた。葛には兄の手の乾いた肌の感触。背筋がぞっとしたが、動かずじっとしていた。
「お前なら、大丈夫」
「はい」
「お前なら、俺の代わりにこの家を継げるから」
「はい」
「お前なら、できるから」
呪詛のように繰り返される言葉。兄は、必死なのだ。わかっている。ひそめられた眉間からもその感情はうかがえる。長男でありながら、こうして横になってばかりの自分が悔しいのだ。そして、この家のことを誰よりも思っているのだ。
「はい」
だから。
兄の言葉を、この身に、受けなければならない。
「俺の代わりに、お前が――」
自分の部屋に戻る途中、祖母に出くわした。祖母は厳しい人だ。対峙すると自然と、背筋が伸びる。
「様子は、どうでした」
「お変わりなく」
祖母が笑ったところを、自分は見たことがなかった。祖母の声は厳かに、廊下に響く。
「貴方が、頑張るのですよ。あの人に苦労をかけてはいけません」
「はい」
葛は頷いた。承知している。彼のために自分は、頑張らなければならない。彼の代わりを果たさなければならない。そして、この家を継ぐのだ。父の跡を継ぐのだ。自分がしなければ、ならないのだ。
「気を抜いてはいけません。伊波家は、由緒正しい歴史を持つ家です。伊波家に恥じない当主を目指しなさい」
「はい」
あの庭に恥じない、当主か。
葛はふと、そう思った。
*
「ん」
葵が伊波家玄関近くの花をいじっていると、門をくぐってきた人物があったので顔を上げた。あちらも葵に気付いたようだ。その視線がかみ合い、二人は、表情を消した。
「葵さん・・・・・・」
日傘を差し、美しい和服に身を包んだ少女と、その後ろに付き従う背の高い従者。二人の姿を、葵は見たことがあった。少女が表情を不安げに曇らせたのを見て、葵は笑顔を浮かべる。
「やあ雪菜、久しぶり」
「葵さん、こんなところに、いらっしゃったのですね」
「うん、まあ、気楽にやってるよ」
「でも・・・・・・」
葵は雪菜の暗い声を断ち切るように、ひらひらと手を振った。
「大丈夫、俺、花好きだからこの方が性に合ってるんだ。楽しいよ。でも、伊波家と知り合いだったんだなぁ」
「・・・・・・ええ。父がお世話になったことがあって」
「ふうん。ま、雪菜も元気そうでよかった」
「あの、葵さん」
「それじゃあ俺は、あっちの庭を手入れしなきゃいけないから」
雪菜の呼びかけを断ち切って、葵は庭の奥へ足をすすめた。
別に嫌ではない。あの子は優しい子だ、会うのが嫌なのではない。ただ自然と、足が動いてしまった。それに自分と会わない方があの子にとってもいいはずだ。
花は、自分を癒してくれる。
そうつぶやいて葵は、きれいに咲いた定家葛の前に座り込んだ。
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