「植木に口付け」・夜襲期間限定ブログ
夏風邪絶好調★
そんな感じでなかつです。
昨日ふと、自分のブログ見返してみたら、最近全然葵葛書いてないということに気付いて驚きました。ちょっと市ノ瀬書き過ぎた。反省している。
ということで「そうだ、葵葛書こう!」と思ってネタ考えてみたら、ひ ど い こ と に なった!
まあでも書いてしまったものはしょうがないですよね。
以下、注意書き。
! 葵が怖い
! 葛たんは士官学校で何かあったらしく、強姦にトラウマ設定(俺得)
! 葵がおかしい
! なかつは頭がおかしい
! シリアスっていうよりただ痛いだけ
これらのことを許容できる方は続きからどうぞ。
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「創」
自分を狙っているのだと勘違いしてしまった。
こっちに向けられるだろうと思っていた銃口は見当はずれな方に向き、そしてその黒い穴から銃弾をまっすぐ吐き出した。気付いた時にはもう銃弾は彼のわき腹を掠めていた。しかし彼は果敢にも自分を撃った相手に軽やかな足取りで近付くと、得意の合気道で地面に叩きつけていた。
「何突っ立っている。フィルムを回収したらすぐ戻るぞ」
気を失ったそいつが地面に口付けている様を一瞥した彼は、普段通りの少しだけ冷めた瞳でこちらを見た。なるほど、彼の瞳は銃口に似ている。恐ろしい、黒。
撃ち抜け、と葵は心の中で葛に言った。
フィルムを回収し四君子堂写真館に戻ると、葵は葛に傷を見せるように言った。葛ははじめ、何のことだからわからなかったらしく、素できょとんとしていた。何だお前、掠ったろう? 脇腹、と説明してようやく合点したようで僅かに頷く。しかし彼は自分でどうにかできるからと階段を上っていってしまった。
「まあ本人がそう言うならな・・・・・・」
葵はテーブルに足を載せてそうつぶやくと、朝から一度も目を通していなかった新聞を広げた。何か面白い記事はないかと紙面に視線を滑らせるが、活字の群れに銃弾が葛を傷付けるあのシーンが重なってしまい、どうも内容が頭に入らない。あれは完全に自分の判断ミスだった。あそこで相手の動きをきちんとわかっていれば、葛が傷つくこともなかった。そう思うとざわりと心が粟立つ。自分が動いたからと言って、葛は傷付いていたかもしれないのだ、それはエゴであるとわかっていたが、葵は軽くテーブルを蹴って、葛の部屋に向かった。
ドアを開けると葛はベッドのふちに腰掛けて自分を治療していた。いや、ただ傷口を眺めていた。包帯や消毒薬はベッドの上に置いてあったが、一切それに手を触れず、白いシャツの右半分だけを脱いだ中途半端な格好で自分の右脇腹にあるそれを見ていた。
「葛、大丈夫か?」
声をかけると、葛が緩慢に顔をあげた。
「そんな心配せずとも、これくらい放っておけば治るだろう」
「放っておくって・・・・・・血、出てるだろ?」
葵は葛のそばに行くと、脇腹の傷を指差した。時間が経っているために血は止まっているが、凝固した血は、かなりの出血があったことを示している。背中の方で所在無さ気にしているシャツを広げてみると、やはり赤いしみがついていた。戦闘中は暗い色の潜入用の作業服を着ていたから怪我の程度がわからなかった。
「包帯、巻いとく?」
「おおげさだ」
彼は顔を覗き込んだ葵を心底面倒そうに手で払うと、ベッドの上に広げていた医療品を集め始めた。彼なりの治療は終了らしい。納得がいかず、葵はその手をつかむ。
「ちゃんと治療するに越したことはないだろ。化膿したら大変だし、もし、万が一、お前の動きに支障が出たらお前だけじゃなくて俺も危険に晒されるかもしれない。悪いがそんなのごめんだ」
葛は小さくため息をつくと、大丈夫だと繰り返した。
「これくらい・・・・・・」
変に強情な奴だな、と葵が眉をひそめふと傷口に視線を落とすと、そのそばに裂傷が見え、思考がとまった。塞がり始めてはいるが結構長さのある傷である。脇腹から背中にかけて、斜めに残る傷跡。そうそう昔のものではない。
「お前、これ」
一つに気付いてみると、葛の体には結構な数の傷跡があった。かなり昔のものもあるが、ほとんどはここ1ヶ月でついたような、生々しさの残るものである。胸の内で何かうずいた。裂傷への視線を断ち切るようにシャツを羽織った葛は、大丈夫だと再び口にした。その言葉に何を求めろというのか。
「全然気付かなかった。ごめんな葛。怪我ばっかさせて」
「いい」
「んーお前たまに無茶するもんなー。俺が言うことじゃないけど、自分を大切にしろよ? 死んだら元も子もねーんだし」
任務のためなら少しくらい傷つくことなど、彼にとって些細なことでしかないのだろう。今までも何度か、自分を大切にしろと言ったことがあった。その度に彼はその言葉を無視した。自分の言葉などほとんど効力を持たないとわかっているのだが、葵は苦笑しながらいつものようにそう忠告した。
葛は葵の歪んだ口元あたりをまっすぐ見つめると、一言、言った。
「お前には関係ないだろう」
その瞳があまりに無感動で、葵は恐ろしくなった。同時に、何か、抑えなければならないものが、体の末梢を、駆けた。
何度も言ったのだ、何度も。
葵は葛の腕を掴むとベッドから引き摺り下ろして床に押し倒した。何事かと動揺する葛を無視して、彼の体の上に馬乗りになる。体重をかけて動けないようにする。葵の下で葛はもがいたが、ばん!と葛の顔のすぐ横に手のひらを叩きつけるとびくりと肩を震わせておとなしくなった。
何故わからないんだ。
葵は彼の鎖骨あたりに噛み付いた。
「あお、い・・・・・・」
彼の吐息がかかる。
「うるさい」
彼の首筋に顔をうずめたまま、手探りでベルトをはずすと、彼が肩を押して、抵抗の意を見せた。慣れたものだ、さほど時間をかけず葵はベルトをはずすと、そのまま彼の下半身を覆うそれに手をかけた。肩を押す力が強くなる。葵は体を起こすと彼を見下ろした。彼はおびえていた。罪悪感よりも先に、嗜虐感が体を支配する。
珍しく感情的な顔で嫌がる彼を無理矢理犯した。
同意の上で葛と交わったことが数度あったが、こういう風に一方的に、何かしたことはなかったように思う。
途中で彼が泣き出した。その涙を舐めとった。もちろん優しさなんてなかった。邪魔だと思った。それだけだ。苛々したまま犯すと、ろくな行為にならないんだなと葵は一瞬冷静に思った。彼の、意外と甲高い声が部屋に響いた。それでさえ雑音にしか聞こえない。いつからか彼は謝り続けていた。そうじゃないんだと思った。そうじゃない、謝ってほしいわけじゃない。ただ、わかってほしいだけだ。
「こうやってお前が傷付くのは、嫌なんだよ、俺は」
傷付けておきながら何を言っているのだ、自分は。
「痛いだろ、嫌だろ」
そう言っても、彼はただ謝り続けた。普段のしっかりした彼からは信じられない、震えた、弱い声だった。彼はここではないどこかを見ていた。葵を見つめていながら、葵を見ていなかった。その瞳に映っているのは多分違う誰かだった。方法を、間違ったのかもしれない。違う、自分は思い知らせてやろうと思ったのだ。自分のことを考えない彼に、無理矢理わからせてやろうと思ったのだ。もしかして自分は、彼が頑なに拒んでいた何かを、呼び覚ましてしまったのかもしれない。おびえ方が普通のそれと違う。彼は動きをとめた葵を見ながら更に謝った。嗚呼、精神が、露出している。無理矢理生皮引っぺがして、今自分は、彼の中にあった神経を引きずりだしてしまった。違う、違うんだ。そうじゃない。葵は葛の頭を掴むと、床にぐっと押し付けた。葛の痛みなど、考えている暇はなかった。違う、痛い方がいいのだ。彼に痛みをわかってもらうために。自分の痛みがどういう意味を持つのかわかってもらうために。
どうしたらわかってもらえるんだ。
「自分が傷付いたらその分他人の傷が減るなんて思うんじゃねぇよ。そんなのお前のただの驕りだ。お前はそんなに偉くない。お前がいくら犠牲になろうが、その身を捨てようが、痛みを我慢しようが、それが他人のためになるなんて思うなよ。世界はそんなに優しくない、お前を見てなんかいない」
僅か開いた彼の唇を、見ていた。
何を期待したのだろう。
ごめんなさい。
彼はそう言った。
葵の目論見はすべて失敗したと、悟った。
わかっている、初めからすべて自分のエゴだった。
自分が抑えきれなかった、それだけだ。
「ごめん」
葵は葛が繰り返し続けている言葉を、同じように、口にした。
「ごめん」
葛の言葉が止まった。
目から何か流れてきたことに気付いて、両手で顔を覆う。
「何でわかってくれねぇんだよ、葛」
彼を下に組み敷いた状態で、彼を犯した後で、今更自分は何を言っているのか。
「このままじゃお前、死ぬよ。俺はもう、そばにいる人間がいなくなるのは、嫌なんだよ」
嗚呼、結局、自分が嫌なだけではないか。もう失うのはごめんだと、嫌になっただけではないか。わかってしまった、ただ自分のために彼を傷付けた。何か教えるふりをして、自分の主張を押し付けた。いくら謝っても足りないくらいのことをした。
この身体の震えが、彼にも伝わっているのかと思うと、情けなくてますます泣けてくる。自嘲した。嗚咽なんだか笑い声なんだかよくわからないふ抜けた声が、口から漏れた。
そうしてしばらく黙っていると、腕に、何か触れる感触があった。熱いそれが、腕をなぞる。そっと、おそるおそる触れてくるそれが葛だと気付くのにそう時間はかからなかった。だってこの空間には二人しかいない。
葛はしばらく腕の表面を撫でていたが、急に葵の腕を掴んだ。そっと、包み込むように。
「泣くな」
優しく力を入れられて、顔から手をはがされる。葛らしくないその行動に、葵は彼の顔を見ようと手を離した。彼は潤んだ目で息をきらしながら、どうすればいいのかわからないというように、ただ葵を見上げていた。少しだけ表れた戸惑いの色が、無表情によく映える。その双眸があまりに純粋で、葵はたった今自分がしていたことを忘れた。目尻に溜まった涙がこぼれて、つぅと頬を伝っていった。
「ごめん」
「謝るな」
お前が言うなよ、と言ってやりたくなったが、抑えた。
「わかった。葵、わかったから泣くな。俺はもっと自分を大切にする。傷がついたらできるだけ治療するし、できるだけ自分の犠牲は出さない。それで、いいんだろう?」
きっと彼は本質的なところで、葵の言葉を理解できていないのだろう。どこかたどたどしく紡がれた言葉は台本を覚えただけのような棒読み加減であった。それでも、とりあえずは満足する。葵は笑って、頷いた。
「ありがとう」
葵は葛の脇腹の傷をなぞった。彼は一瞬身体を硬くしたが、なすがまま、おとなしくしていた。無論、葵にもう彼を犯す気などない。ごめんともう一度だけつぶやいて、葵は彼の横に寝転がった。
汗でじっとりと濡れた身体が気持ち悪い。
葵は笑いながら葛の髪に触れると、その感触に何故だかひどく安心し、ベッドから布団を引きずりおろして自分と葛にかけ、そのまま眠りについた。眠りはすぐに、自分の意識にまとわりついた。
※創(キズ)=切りきず
本当にすいませんでした!
これは解説が必要なわけわからなさ、なんですが、ちょっと何から説明すればいいのかもうわかんない・・・・・・めんどくさい・・・・・・(えっ)
ああそうだ、葵は静音さんがいなくなったこともあって、「世界とか他人とかが自分を幸せにすることはない、自分が幸せになるには自分から幸せを作りにいかなきゃだめだ」と思っていて、葛は自己否定で自己嫌悪な子だから、「自分が犠牲になって他人が幸せになればいい」と思っている。葵はそんな葛の考え方が甘いと思っていて、「いやだからお前が犠牲になったって、結局他人を幸せにできないんだよ。そこ気付けよ」と思って苛々して、ぱーんしたのです。というお話です。簡単に言えば。簡単に言えてないけど。
ブラック葵だと見せかけつつ、最後は泣いちゃうホワイト葵なのですよ! 葵いい子なのよ! ちょっと現実知っちゃってるだけ!
全部風邪で頭が朦朧としているせいだということにする。
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