夜光に口付け 世界は誰も見ていないよ! 忍者ブログ
「植木に口付け」・夜襲期間限定ブログ
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一つ↓のSS、「創(キズ)」の後日譚的な短い文章を載せておきます。

この前、同じ学科の友達と飲んだとき、その子が「今まで親の決めたことやってきたから、好きなものとかはまったものとかないんだよね。なかつんははまってるものがあって、うらやましいなぁ」と言われたのがすごく印象的で、腐った私の脳みそは「おいおいそれ葛たんっぽくね!?」と思って、「好きになる機構がない」葛たんを書こうと思ったのですが、失敗しました。リベンジします。

ちなみに今回のキズ×2を書いているときのBGMは、

BGM:「マドツキ・イン・ワンダーランド」→「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん イメージアルバムPV 第一弾+第二弾」→「あぁあぁあぁああぁあぁああぁ」→「わるつ」→「ワールズエンド・ダンスホール」→「害虫」→「死にたがり」→「ローリンガール 本家+ラップのKAITOver」→「リンネ」→「モザイクロール」 をリピート。

でした。ほとんどボカロ(笑)


そういえば、このくらいのシリアスさで市ノ瀬を妄想している私の頭は、つくづく終わっているなぁと思うのですよ。めっちゃシリアス書きたい、市ノ瀬で。
多分それはただのなかノ瀬であって、市ノ瀬ではない。
つまり創作である。





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「瑕」

あれから数日が経った。
葵は、何事もなかったかのように自分に接した。いや、一度だけその笑顔が、罪悪感でまみれる事があった。だがそれだけだ。接し方に変わりはないし、何かそれに関する行動を起こすことはなかった。
葛は現像室の暗闇の中でぼんやりとたゆたう現像液の入ったトレイを見つめていた。徐々に浮かび上がる図像を見ながら、手探りでこの前脇腹に受けた傷を触る。きちんと治療したかいがあってか、治りが早く、3,4日も経てば完治するだろう。痕が残らなくてよかった、葛の肌は綺麗だからと言われたことを思い出し、むずがゆい気持ちになった。さらりと、大して重要なことでもないように、聞き流せそうな勢いで葵は恥ずかしい言葉を口にする。
きちんと現像できた写真を干して、葛は現像室を出た。
「遅いぞお前、風蘭の料理冷めるだろー?」
テーブルの上には風蘭が持ってきた昼食が並んでいた。まだ湯気がたっているものもあるため、さほど時間は経っていないと思われたが、風蘭の姿は既になかった。葵はテーブルに肘をつき、顎を手に乗せてぶすっとしていた。
席につくと、葵はいただきます、ときちんと手を合わせた。いいとこの出らしい彼は、食べる時だけ行儀がいい。機嫌が悪そうだった彼の表情は、風蘭の料理によって明るいものになった。
「やっぱりお前は、笑っているほうがいいな」
葵の明るい笑顔を見た葛は、思わずそうこぼした。なんだぁ急に、と葵が怪訝そうな顔をする。自分でも何を言っているんだろうと思った。何故そんなことを口にしたのか、冷静に考えて一つの出来事に思い至る。
「俺は、貴様の泣き顔が苦手らしい」
「は?」
「この前、葵が泣いた時、なんというか、とても、苦しかったからな。やはり貴様は笑顔のほうがいい。そうやって笑っていろ」
「この前って・・・・・・」
葵は気まずそうに目を伏せた。場の空気が重くなる。それを気にしない葛は言葉を続けた。
「俺には多分、自分を大切にしてどうにかなることがないんだ。それを考えたことがなかったんだ」
葵は、自分を大切にしろと、何故それがわからないと言って泣いていた。身体の痛みを感じながら、彼の泣く姿に胸の中あたりが痛んだ。あれから葵の言葉を数回反復して、考えた。
祖母に軍人になれと言われた。それを目指して生きてきた。そのために生きてきた。その夢は自分の能力のせいで断ち切られた。軍人になるための要素以外は、自分の人生から排除されていた。
「何かのためにしか生きてこなかった。自分のために何かしたことがなかったんだと思う」
食事時にふさわしくないまじめな声で葵が言葉を返す。
「その何かをお前は、好きだったんじゃないのか? だったらそれは、お前自身のために何かしてるのと同じだぜ。自分の好きなことのために何かすることは。自己満足に近いけど」
「言われたことしかやってこなかったから、おそらく違うのだろう」
「・・・・・・」
「俺には好きなことも嫌いなこともない。言われたことはできる。それに得手不得手があるだけだ。だから、自分の輪郭が見えていなかったのかもしれない。自分がモノと同じだったんだろう。言われたことができればそれでよかった」
淡々と語る自己分析を葵はおとなしく聞いている。葛は大皿に箸を伸ばした。
「これからは自分を大切にする。実感はないが」
「お前、本当にかわいい奴だよな」
「・・・・・・は?」
話をぶった切るような葵の発言に、裏返った声を発すると、葵は先ほどまでのまじめな要素を排除して、いたずらっぽく笑っていた。泣いていた彼の顔にその笑顔が重なる。
「ま、頑張れよ」



ジャンルがほのぼのなんだか(いやそれはないだろ)、甘いんだか(えっ)、シリアスなんだかわからない。

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