「植木に口付け」・夜襲期間限定ブログ
前、書いた近未来パロの設定を利用して、もちょもちょと。
書きたかった場面を書いただけのうえに、文章力がどこかへログアウトなされたので(涙)、全然楽しくないブツに・・・・・・。すいません。今回だけは許して下さい!
つ、次はもっと臨場感的なものを出したいよね・・・・・・。
では、おkな方はつづきからどうぞ。
すごく中途半端です・・・・・・。
次は西尾+葛と葵が出会うシーン書きたい!
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2131年、上海。
世界の経済活動の中心となった中国の、そのまた中心である。
当然、夜になってもLEDが煌々と輝き、娯楽と愉悦を求めた人々が数多く街をさまよっている。車も人も複雑にすれ違い、入り組む。冷静に考えて、この中から一人の人間を追うことなど不可能に思えた。
三好葵は片手をハンドルに置き、もう片方で依頼人から渡された資料を持って眺めていた。依頼は簡単、とある男をつけ、その男が取引相手から受け取った小型情報端子(USB)を奪うことである。どうやらそのUSBには依頼人の企業の機密データが入っているらしい。
男は目深に帽子を被り、夜の闇にまぎれながらバイクにもたれて誰かを待っている。葵たちはその男から十数メートル離れたところに車を止めていた。
葵はスパイである。もっとも、最近では表立って動けない仕事を請け負う何でも屋となりつつある。明らかに法を違反している調査、潜入が主な仕事だ。
「きちんと見ていろ」
手元の資料に目を落としていた葵に、助手席から声がかけられる。抑揚のない硬いその声は相棒、伊波葛のものである。はいはいとハンドルを握りなおしながら、ちらりと葛の方に視線をやる。きっちり整えられた髪に黒のスーツ。見た目は全くスパイっぽくない。どこぞのエリートサラリーマンかと思う。性格も至極真面目、スパイのようにこそこそ活動するよりは正々堂々、まっすぐ物事へ立ち向かっていく方が似合う男である。
「葵」
鋭く飛んだ声にはっと気付くと、見張っていた男に白いスーツを着た男が近付き、何か言葉を交わしている。裸眼では手元まで確認できないが、おそらくあれが依頼人の言う取引相手だろう。横に置いておいた双眼鏡を手に取り、覗く。運良く男の手元が視界いっぱいに映り、小さなUSBを受け取るのが見えた。
「もらった」
葵の顔に笑みが浮かぶ。
白いスーツの男が何事もなかったかのように歩き出し、二人が追うべき男はふわりとバイクに跨ると、素早くエンジンをふかして走り出した。
「行きますよっと!」
葵はアクセルを踏み込むと、車を急発進させた。とは言っても、気付かれて狭い路地に入られてもこちらが不利である。バイクと車では車体の幅が違いすぎる。多少距離を開けて車を走らせ、泳がせる手はずになっていた。途中で一気に距離をつめ、焦らせて袋小路へ誘い込む。
が。
現実はそううまくいかない。
例え、コンピュータのシュミレーションが格段に進歩したこの世界でも。
「くっそ・・・・・・!」
男の乗ったバイクが急に曲がった。車一台通ることができるか怪しい裏道である。葵は小さく舌打ちすると、多少車体がこすれるのを構わずにハンドルを切って路地へ入った。キュルキュルとタイヤがこすれて嫌な音がする。クラクションを鳴らされたが、気にならない。
「気付かれたか!」
「わからない。ただ、こうして追ってきてしまえば異常に気付くのは確実だ」
「わかってるって!」
男が僅かにこちらを向いた気がした。こうなった以上、できるだけ早くUSBを奪取することが先決だ。スピードをあげたバイクに合わせて更にアクセルを踏み、ゴミ箱や古くなって剥がれ落ちた木材などを蹴散らしながら路地を進んだ。
「このまま真っ直ぐ追え。そうすれば当初の予定通りの場所だ」
「よっしゃ!」
現実はまた、いい方向にもよくわからないってことか。
と思ったのも束の間、男はバイクを直角に曲げると、人すら通らないであろう、ビルとビルの隙間に消えた。葵は悔しさのあまりハンドルを叩いて、急ブレーキを踏み、男の消えた隙間をにらみつけた。暗くてよく見えないが、バイクの明かりらしきものが道を進んでいる。
「ちくしょう」
さてどうすると頭を抱えた葵に、助手席の葛が冷静な声をかけた。
「葵、戻れ。やり直しだ。あいつを追い詰める」
葛は男が消えたほうではなく、まっすぐ前、フロントガラスの向こうを無感動な目で見つめていた。葵はすぐに葛の言葉を理解できず、一瞬戸惑いの表情を浮かべた。もう逃げてしまったのに。失敗だ。
「葵」
葛の瞳が、こちらを向いた。
「わかったよ。戻るって!」
葵はギアをバックに入れ、葛の言うまま来た道を戻り始めた。任務に失敗した苛立ちのせいで、運転が荒くなる。ガタガタと揺れる車内の中で、急に、葛の首ががくんと落ちた。葵は息を飲み、突如動かなくなった葛に声をあげる。
「葛!? おい、葛! お前大丈夫か!?」
まさか今ので気を失ったわけではあるまい。しかし顔を下に向けたまま、1ミリも動かなくなってしまったのは事実である。ちくしょう、何なんだとつのる苛立ちを抑えつける葵の視界に、青色のボックスが現れた。その中には「CALLING」の文字。その下に書かれた着信者名を見て、葵は音声受信デバイス(イヤホン)を窓ガラスの下の部分からしゅっと抜き出すと、自分の右耳にかけた。
「葛!」
『心配ない、身体コントロールを放棄しただけだ』
聞こえてくるのは紛れもない葛の声である。ちらりと動かなくなった葛に視線をやり、葵は答えた。
「そうか」
『俺の指示に従ってくれ。視神経とGPSのネットワークをつなげた。男の位置を捕捉している』
「りょーかいっ!」
『右だ』
葵は葛の言葉通り、ハンドルを右にきった。さっきふとよぎった失敗の念が薄れていく。彼のネットダイブ能力は超一級だ。しかも生半可にコンタクトに情報を映し出すだけでなく、身体コントロールを放棄し、意識を完全にネットの世界へ『連れて行く』ことで、ネット上をさも自分がさまよっているかのように動けるのだと、葛は言う。ネットを動くどころか電子頭脳化すらしておらず、ネット上の葛の声もこうしてイヤホンで聞かなければいけない自分には、到底理解できない話だ。
だが、信頼はしていた。
『次の角を左』
右耳から聞こえてくる彼の声が心地いい。徐々に自信を取り戻させてくれる。
彼となら、何でもできる気がすると、葵は場違いなことを考えた。
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