「植木に口付け」・夜襲期間限定ブログ
悲しみが壊れて泣きそうだ!
こんにちは。8話の公式の病気具合に涙が出るなかつです。
葵葛を書いてみました。EROは書けません!
出てくる人がぼんやりしたシリアス、ばっかり書くことに特に定評のない、なかつです。
でもこんなんばっかり量産して、もったもたしてるのが常のなかつです。
梨本Pの「あぁあぁあぁああぁあぁああぁ」がイメージですかねー。
葵も葛も、自分のこと、どれくらい話しているんだろうなぁ・・・・・・。
葵はあっさり軽く話しそうだよなぁ、と妄想。
話は変わりますが、スパイとして売春宿に男娼としてもぐりこまねばならなくなった葛たんを午後から妄想していました。そこによく来る客から情報を引き出さねばならなくて・・・・・・みたいな!
「売春宿? 桜井さん、すっごい仕事回してくるなぁ!」
「そこまでして手に入れなければならない情報なのだろう」
「で、誰が行くわけ?」
「・・・・・・私、でしょうか」
「雪菜にそんな真似はさせられない」(棗必死)
「俺じゃ無理だろ」
「・・・・・・は?」
「・・・・・・」
「・・・・・・いや、俺でも無理だろ」
「いける!」(葵、いい笑顔で)
「き、貴様っ・・・・・・!」
「だってほらー、雪菜にそんな真似させられないだろー? やばそうだったら助けに行ってやるって!」
だがしかし、葵は客として行く気ンマンマなのである。
\アタックチャーンス!/
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"最大限の侮蔑を君に"
心に形がなくて困るのは、傷が目に見えないことだ。
目に見えなければ、対処の仕様が無い。どうすることもできない。その傷が嗚咽だったり、暴力だったり、狂気だったり、何かしらアウトプットされて人の目に見えるようになれば、対処は可能である。しかし、アウトプットが無い限り、いくら傷が化膿しようが、周りの人間にはわからないのだ。
例えそれが、修復しようの無い他人には大きすぎる傷になっていたとしても。
周りの人間にはわからないのだ。
想像上で、自分の心についた古傷を撫でる。少しささくれ立っていた。まだ完治していない。嗚呼、彼の傷にも触れることができれば。
「何をするんだ」
葛はぼんやりと天井に視線を向けた。その視界の隅に、三好葵の茶色い髪がちらりと映る。背中越しに感じるは、今日干したばかりの柔らかな布団の感触。ベッドに倒れこんだ状態である葛の顔の両脇に、彼が手をついている。客観的に考えよう。自分は今、彼に押し倒された。ここは葵の部屋である。
風蘭の持ってきた夕飯を食べながら、葛は葵の口数が少ないことに気付いた。無感動な目で彼を見つめるが、彼は目の前の中華料理に視線を落として箸で皿の中をかき混ぜていた。一つだけ残った海老を弄んでいる。食べる気はないらしい。
「行儀が悪い」
無意味に続くその行為を止めると、葵は僅かに眉をひそめ、はいはいと最後の海老を口に運んだ。次に言い訳がくるだろうと踏んで葛は彼の言葉を待っていたが、予想に反してもぐもぐ海老を咀嚼するだけで何も言い返さなかった。
「どうした」
「別に」
即答される。夕飯の前に彼を怒らせるようなことをしてしまったのだろうかと不安に思ったが、特に思い当たる節はない。そういえば、今日彼と交わした言葉数は、いつもより少なかった気がする。気付いてしまうと気になるものだ。非日常の中で消費される日常に見つけた小さな綻び。
しばらく、沈黙が続いた。
この状況を打破する手段を残念ながら葛は知らなかった。雪菜のように他人の思考を読み取る能力があれば、彼の寡黙な理由がわかるだろうか。嗚呼、嫌だ。能力に頼った思考ではないか。
沈黙がざらついてくる。はらってもはらってもとれない砂のようにあらゆるところへこびりつく。葛は眉をひそめて、ともかく静寂から脱しようと口を開いた。
「葵」
「なあ、葛」
葛の声は、微弱な緊張を伴った葵の声にかき消された。葵は怖いほどの無表情で、こちらを見ていた。
「俺が最低な人間でも、許してくれるか」
「何を、言って」
ガタンと椅子を蹴飛ばす勢いで葵は立ち上がり、向かいに座っていた葛の腕を掴むと強引にリビングを出た。彼に引きずられる形になった葛は何故か彼の手を振り払うことなく、彼に引かれて歩いた。
着いたのは彼の部屋である。ドアを開けると広々としたスペースにこまごました家具が置かれていた。自分の部屋には家具が少ない。生活感がないと彼は言った。そんなものいらない。そんなことを考えていると、葵はぐっと葛を自らの体の方へ引き寄せ、そのままベッドに葛を投げた。
ごめんと、声が聞こえた気がした。
「いいじゃん」
葵は屈託の無い笑顔を浮かべ、していたワイン色のネクタイを緩めた。それを見てやっと、自分がどのような状況に置かれているか、これから起こるべきことは何なのかを自覚し、葛の肩に力が入った。その様子を見た葵は更に笑い、葛の額に唇を落とした。少しずつ、現実が自分の中の現実と乖離していく。彼と関係を持つのは初めてではなかった。だが、何が彼の箍をはずしたのだろうか。突然の展開すぎてついていけない。ここで彼が頭の悪くて甘ったるい軽口でも叩けば、ああそういう気分なのだろうなと納得したであろうが、葵はずっと、唇の形を笑みに保ったまま、言葉を続けることはしなかった。
「・・・・・・」
酔っ払っても、いないはずなのに。
彼の唇が額から口に移動し、数度軽い口付けをして、それから深いものになる。電気をつけたままなのが嫌だった。自分の中にどこか、このような行為に対する抵抗が残っているのかもしれない。今更何だというのだ。葵が一度顔を離し、天井の方に視線を向ける。
まるで心を読んだかのように、ちょうどいいタイミングで電気が消えた。というより、電球が破裂した。小規模な爆発音が聞こえ、ぱらぱらとベッドの横に破片が降った。
――能力を、使ったのか。
おそらくこの時間からの召集は無いだろうからよしとしても、全く無意味な場所で、無意味な能力の使い方をする意味がわからなかった。普通にベッドから出て、消しに行けばいいだろう。何を面倒になっているのだろうか。
この数分間、彼は自分をその気になれば殺すことができる。葛こそその気になれば彼を投げ飛ばして部屋から出て行くこともできるが、そうする気は無かった。だが何故能力を使ったのか、その意味を質したくて僅かに上半身を起こしかけると、葵が再び唇をふさいだ。その口付けはいつもより執拗だった。
葵の手が葛の頭から肩にかけてをなでる。その触れ方に葛はある種の慈しみを感じた。壊さないように、気遣っている。大切だから、優しくする。そんな感情が感じられた。葵は葛の服をはがす作業に移った。その手つきもいつもと違う、柔らかなものだった。普段は遠慮がない。先ほど見た彼の能力の破壊的性質とその手つきがうまくつながらなかった。
そこで気付いた。
彼の手首を掴む。
「俺は代わりではない」
彼は、自分を誰かの代替としてこの行為に及んでいる。
葵の手が止まった。
葛は彼の顔を正面から見た。彼は、苦痛に顔を歪めていた。その苦しみが身体的なものではなく、精神的なものだということはすぐにわかった。どうしようもない苦しみだと、わかっている顔だったから。ただ耐えるしかない苦しみだと、わかっている顔だったから。
「俺はそいつではない」
「わかってるよ、そんなこと」
あいつはもういないんだから、と彼は恐ろしいほど冷たい声で言った。
そうか。
彼が一度、語っていた。
さりげなく、何事もなく。
自分は大切な人を亡くしたのだと。
その時彼は笑っていた。だから、何もないのだと思った。悲しみは悲しみでしかなく、苦しみではないと思っていた。彼ならば、それを乗り越えて生きていけるだろうと思っていた。自分の諦めの悪さと過去に対する弱さは充分わかっていたから、彼は違うと思っていた。
「偽者だって知ってるよ。俺ら、どうせ偽名なんだし。な、葛」
彼は誰かを呼ぶ。それは今、彼が押し倒している男の本名ではない。ただ彼の下にいる存在とこの能力に付けられた名前だ。
「葵」
嗚呼、これは彼の名前ではない。今こそ、彼の名前を呼ぶべきなのに。
もどかしかった。
「偽者なんだよ、俺たち。俺たちは伊波葛でも三好葵でもないんだよ、本当は」
だから、いいだろ。代わりにさせてくれよ。
それは彼の傷から出た言葉であった。投げかけられて気持ちのいい言葉ではなかったが、それを拒絶できるほど強い人間ではなかった。彼は私のはだけた胸に、その額をつけた。
「最低だ、わかってる、だけど、許してくれ」
葛はまだ治りきっていない傷を触るようにそっと、彼の頭に手を回して、抱きしめた。目を閉じる。
彼にかけるべき言葉を知らない自分は最低なのだと思った。
ただその傷が広がらないように、葛は彼の胸に抱いていた。
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・・・・・・こいつら気持ち悪いな・・・・・・。
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