colors of garden3

thanx せまじ様　の庭師パロ第三弾。

ちょーーーっと進展した気がします。進展記念に今回のお花はカズラ！

実は長男の微妙な設定とか、人間失格な葛たん設定とか、細かい自分設定を取り入れたプロットが一応最後までできていまして！　それがだいぶ長くなりそうなんですが！　果たして皆さんついてきてくださるのかしら･･････というか私が終われるのかしら･･････むう･･････。

というか某フォロワーさんが、「葵葛」＝昼顔だっていう情報を提供してくださったのですが、昼顔をいつのタイミングで出すか悩んでいます。
最後桜にしようと思ったんだけどなー･･････。あえて昼顔にするかなー･･････。
一応初夏～春で季節一周して終わる感じで考えているのですが。

あにゅにゅまあいいや、なるようになるって頭の中のデ/ュシ/ャン（すいません私の唯一神のようなものです）が言ってた！　彼が言うなら大丈夫！（だからそれ妄想だって）

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"colors of garden 3"　 白く揺れるは定家葛


夏の足音がすぐ近くまで聞こえ、長時間の庭いじりには帽子がかかせなくなってきた。特に今日は暑い。蝉が鳴いてもおかしくないくらいだ。ここに来る途中、塀の上でへばっている猫を見つけた。
つばの広い麦わら帽子を被り、半そでのシャツの袖を更に数度まくって葵は伊波家の庭の片隅にうずくまっていた。容赦なく照り付けてくる日光は葵の頬に汗を滴らせるだけでなく、庭に植わる植物たちの体力さえ奪う。いつもの作業工程を入れ替えて、先に伊波家の子どもたちの部屋に行ってきた。今日はこの庭にある植物の手入れをいつもより丁寧にやろうと決めていたからである。多少時間が押しても、これでこの前のように鉢合わせすることはないだろう。
急に上がった気温でやられた花たちにたっぷり水をやり、残念ながら枯れてしまった葉は切っていく。慣れた手つきで剪定ばさみを操りながら、葵は鼻歌を歌っていた。こうして植物と戯れていると、時間を忘れてしまう。人と話すことが嫌いではなかったが、それより落ち着く行為であることは純然たる事実であった。彼らは言葉を使わない。が、会話をすることはできる。というのが葵の持論であった。それを仲間に言うと、似合わないと笑われる。いいじゃんか、なぁ？　と目の前の低木に話しかける。その低木はようやく風車のような花びらの白い花が咲き始めていた。今日の暑さでちょっとへばっているようである。
麦わら帽子のつばを少し上にあげて、しばらく白い花を観察していた。
「何を見ている」
「おわぁっ！？」
突然声をかけられて尻餅をつくと、上から伊波家次男、葛が葵を覗き込んでいた。首筋に汗が流れる。
葛はこの暑さだというのにボタン一つ開けず、きっちりとした服をきっちりと着ていた。ただ、前髪が数本垂れている。それだけの変化でも葵の目には新鮮に映った。葛はじっと葵の目を覗き込んでいた。そういえば何を見ているのか聞かれたのだ。葵は麦わら帽子をとって笑った。
「ああ、テイカカズラですよ」
「テイカカズラ？」
白い花を指差すと、葛は真面目な表情でテイカカズラの花を見た。そんな真剣に見なくてもよいのだろうに、とつい笑いがこみ上げる。
「藤原の定家で、定家葛です。あ、おぼっちゃんと同じ名前ですね。カズラ――っと」
依頼主の息子の名前を、敬称無しに呼んでしまった気付き、葵はハッと口をつぐんだ。おそるおそる葛の様子を伺うが、彼は特に変化を見せず、自分の名前と同じ音をもつテイカカズラの花を見つめていた。
葵はすくっと立ち上がり、服についた土をはたいて落とした。
「よくここにいるのか」
「え？」
葛はテイカカズラに向けていたのと同じ、妙に真面目そうな目をしたまま、こちらに顔を向けた。
「そうですね、ここの家の庭は広いですけど、庭に、いますね」
そりゃ庭師ですから、と握ったままの剪定ばさみをふらふら揺らし、葵は答えた。葛は再度白い花に視線を移すと、僅かに声量を落とし、澱むことなく言葉を発した。
「もし迷惑でなければ、花の名前でも教えてもらえるかと思ってな。こういう方面の知識は一切持っていない」
それは、そうだろう。
花を嗜むより先に学業やら何やら、覚えることはたくさんあるに違いない。逆に葵は高度な知識などほとんど持っていなかった。葛が少し寂しそうに見えたので、葵は躊躇う間もなく頷いた。
太陽が肌を焼いている。
そばにはテイカカズラの白い花。
その中で葵は、二度目の彼の笑顔を見た気がした。
「そうか」

テイカカズラの花はただ白いばかりであった。



テイカカズラの花言葉：優雅　栄誉