夜光に口付け Psycho Psycho Psychology 4 @近未来パロ 忍者ブログ
「植木に口付け」・夜襲期間限定ブログ
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書き終わりました!
本当は昨日書き上げる予定だったんですが、パソコンの調子が悪くてすぐピューンと消えてしまうので、泣く泣く今日に。

複雑系という学問は、やっていることは私の好みドストライクなんですが、いかんせん内容が難しすぎてマジワロス。無理無理、あんなの無理。



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"Psycho Psycho Psychology " Emotion4


幼い頃、そう、小学生の頃、いじめられた経験があった。
他の子と同じように生活しているつもりだったのだが、何がいけなかったのだろうと、思った。いじめられているのはクラスで私だけだった。今ならば、何故彼らが私をいじめていたのか、なんとなくわかる。私は穏やかすぎた。それが、彼らには「弱い」という形質にしか映らなかった。又、先生にかわいがられていたせいもあるだろう。私は、先生のことを信じていた。それが彼らに苛立ちを与えた。
私は彼らにはむかわなかった。はむかえなかった。何か理由があるに違いないと思った。それを見つければ、それを直せば、いじめはなくなると考えた。
私は彼らの思考を、感情を、理解しようと努めた。いじめられるのは、嫌だった。恐怖はなかった、と自分を回想する。同情すらしていた。きっと、お互い理由があるのだろうと。
ただ単純に、彼らの心を、気持ちを知りたかった。
それだけだった。
私は母に、「人の『ココロ』をべんきょうしたい」と言った。
母は答えた。

「それなら『シンリガク』ね」


@

葵がドアに埋め込まれたプレートの文字を見つめている間に、葛はコンピュータの電源ボタンを押し、ディスプレイを表示させていた。
ヴゥン、と低い音が響き、部屋の空気が変わる。
壁のいたるところで光が点滅していた。白だけではない、赤、緑、黄、青――。
「ネットにはつながっていないらしい。外部からはアクセスできない」
浮き足立ったカップルに見せれば、「キレイ」の一言ですむかもしれないが、今の葵には、何か恐ろしいものにしか感じなかった。
葛は。
葛は何を感じるのだろう。
「駄目だ、<悟り>らしきプログラムは一見ないな」
彼はディスプレイを見ていた。壁一面のコンピュータの瞬きを見ていない。
どうしてこんなに怖いのだろう。
たかが、コンピュータなのに。コンピュータなんてどこにでもあるじゃないか。この感情に起因するものを知りたくて、葵は葛の顔を見ていた。
「大丈夫か、葵」
こちらに顔を向けず、葛がつぶやいた。
「あ、ああ」
そうだ。自分が今すべきことは、このコンピュータの中に心理解析システムがあるかどうか、確かめることだ。あのドアのプレート――可能性は、かなり高い。
ディスプレイには、WindowsOSでよく使われるブルーの背景に、ゴミ箱とマイドキュメントのアイコンのみがあった。シンプルすぎて、逆に居心地の悪さを感じる。葛はキーボードを操作してそれらのアイコンを調べていたが、すぐやめてスーツの内ポケットから両側が凸型のコードを取り出した。
「何も手がかりがないな。俺が直接潜る」
「葛」
「心配するな。すぐ終わる。葵、貴様は他にコンピュータの存在する部屋がないか、<悟り>システムに関する、何でもいい、メモか文章がないか探してくれ」
葛はディスプレイから離れ、壁のコンピュータに近付くと、そこにあったライン端子にもっていたコードの片側をさした。そこで一度、葛は振り返り、葵の方を見た。
「了解」
その言葉に頷いた葵は、うなじの部分にある電子頭脳用端子を見ないよう、部屋を出た。

カチ、と音がしてコンピュータと自分がつながる。まずは二重に防壁(ファイヤーウォール)をほどこし、コンピュータ内部に侵入した。現実世界と重なって、複雑なプログラミング言語が現れる。その中から数行を選び出し、脳内にアプライする。ロックのかかっている領域をアルゴリズムから開放し、またその中身をチェック、アプライを繰り返す。
呼吸することを、つい忘れる。人間の身体は面倒だ。無意識レベルで様々な制御をしている。
名前のついていない、プログラムがあった。
「・・・・・・これか」
身体コントロールのパネルを呼び出し、擬似脳殻を全てONにする。視界の中心に"Now loading"の文字。ゲージが100%に近付く。
ゲージがいっぱいになった瞬間、葛は現実世界の呼吸から解放された。

葵はもう一度書斎に戻った。壁一面の本をタイトルだけざっと眺める。あるのは心理学の本、それに少しの認知科学の本だった。小説など、娯楽にかかわる本は一つもない。
葵も、ある程度他人の心を推測することができる。それが、人間だ。だから、小説が読める。小説で泣ける、笑える。
波圭一はどうだったのだろう。
一冊一冊、本を取り出して、メモがはさまっていないかめくっているうちに、一つだけ、複雑系を扱った理学書を発見した。そこに記された目が痛くなるような数式に、思わずため息をついた。



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